外国人材の定着を目指した日本語教育と企業サポートの新戦略:J-connect 蔭山俊慈氏・峰子氏

外国人材の定着を目指した日本語教育と企業サポートの新戦略:J-connect 蔭山俊慈氏・峰子氏

会社名:

株式会社J-connect

代表者:

蔭山俊慈・峰子

2022年6月設立。日本へのpre-留学、post-留学を日本語教育・異文化教育の観点からサポート

Q.現在の事業を教えてください

俊慈:「主に3つございまして、1つは外国人が日本で働く際の語学サポートで、日本語の教育をしております。2つ目は外国人材を受け入れる企業のサポートで、特に採用したものの定着しないというお悩みが多いことから、企業側がグローバルな視点を持つためのセミナーや、育成に関する教育を行っているところです。

3つ目は最近の取り組みなのですが、これも外国人材を取り扱っている企業向けに、どうすれば企業として上手くやっていけるのか、成長できるのかといった、単体のサービスではない横断的なコンサルティングを提供したいと考えております。」

Q.なぜ、現在の事業を始めようと思ったのですか?

俊慈:「私は長年、大学で外国人留学生に日本語の教育をしておりました。大学ですと、彼らは留学している期間だけ日本語を勉強している訳ですが、そのうち”日本で働いてみたいな”ということを私に言ってくるんですね。しかし、当時の私は大学の教員ですから、卒業後も学んだ日本語を活用したいという意欲を持っている人たちに報いてあげる手立てがありませんでした

こう言うと少しおこがましいのかもしれませんが、せっかく教えた日本語ですし、彼らの日本語が上達する姿を間近で見ているのですから、仕事についても少し関わっていきたいというか、貢献してあげたいと思ったことが起業の原点になります。」

Q.現在の事業を通して感じていることはどんなことでしょうか?

俊慈:「留学生はそもそも、日本で働くために日本語を学んだ訳ではないというケースが多いんです。例えば漫画やアニメが好きだったり、日本のポップカルチャーが好きだったりといった理由で日本語に親しんでいて、ある程度上達してくると、せっかく身につけた日本語をもっと上手く使ってみたいと思うようになるんですね。

特に大学生ですから、学生生活が終わった後に何か社会へ還元したい、貢献したいという思いが出てくるのかなと思います。強く日本で働きたいと思っていても、自国へ帰ればどうしても日本語力が落ちてしまいますので、日本語を活かして企業に勤められるのは嬉しいというか、やり甲斐を感じてもらえているようですね。

教え子の中には、アメリカの企業に就職したものの、やはり日本と関係のある所が良いと職を探して、メーカー系の大手日本企業に再就職して日本と関わっています、と報告してくれた方もいましたね。一旦帰国して私の所へ戻って来てくれた方や、旅行で来日した際には”お世話になりました”と訪れてくれる方もいらっしゃるのですが、やはり1番日本語を話せた時にもっと何かできたら良かったという気持ちがあるようです。」

峰子:「外国人材への日本語教育事業は、B to Cの形としては国内外の方を対象としたオンラインによる個人レッスンで、ほとんどがビジネスマンです。B to Bにつきましては、国内企業で働く外国人社員が実務で日本語を使うにあたりブラッシュアップしたい、というご要望にお応えする形で、日本語能力検定N1以上の方々が対象ですので、非常にレベルの高い内容になっております。

元々高い日本語レベルの社員へ更に教育を、というのはその社長様のニーズであるとも言えるのですが、日本人の顧客側が外国人だと分かることによって態度が変化することを危惧されてのことでもあるようです。また、外国人社員が日本人社員の補助を必要とせず、独立して仕事ができるようにして欲しい、という思いを持っていらっしゃるようですね。

日本人側の意識については、受け入れ企業のサポート事業にも繋がる話だと思うのですが、細かい発音の癖が評価を下げる要素になったり、大らかさがないというのか、外国人が話す日本語に対する許容度の低さも課題ではないか、と常々考えております。日本人と同レベルの日本語でなければサービスそのものの信用度が低下する、ということがあるようですね。

受け入れ企業のサポート事業につきましては、介護の現場で日本人の管理職や職員さんとお話をさせていただく中で、外国人材と一緒に働くという意識が希薄というか、違う文化の背景を持っていること自体を意識されていない方が非常に多いということを痛感いたしまして、1回30分✕10回シリーズの『異文化理解講座』を実施したことがあります。

その中で、それこそ初めて外国人を見た、交流どころか一緒に働くなんて初めてだという方が何を意識すれば良いのかをお伝えしたところ、受講者に行動の変容が見られました。例えば、自分の話している日本語が相手に伝わっているのかどうかを一切意識していなかった方が、どういう風に表現すれば伝わりやすいのかを考えながら外国人材と関わるようになった、といったことです。

講座の成果から、これはあらゆる業界で必要とされていることなのかなと思いましたので、あなたの日本語は本当に伝わっていますか?というアプローチで、伝えたつもりで実は伝わっていないことに気づいていただく、意識づけのセミナーもご提供するようになりました。日本人同士ですとバックグラウンドが同じですから敢えて確認するということは少ないと思いますが、異文化の方に暗黙のルールは通用しませんので、意識する必要性に気がついていただくのが大事だと思っています。

受講された方からは、客観的な視点を持てるようになった、自分の言ったことが分からないのは相手の外国人に非があると思い込んでいたけれども、少し立ち止まって自分の言動を振り返るようになった、外国人材に不満を持っていたが、自分が悪かったと気づかされて感謝している、といったお声をいただきましたね。

実はこうしたことは、例えば60代と20代の世代間や、正社員と派遣社員といった雇用形態が異なる人々など、バックグラウンドが異なる人間関係のコミュニケーションにも活かされるようにも思います。多様性の時代ですから、そういう意味ではこうした意識を養っていかなければ、なんとなく文脈が伝わるというのは難しい世界になってきていますよね。変化も早いですから、日本人であっても1つの企業で色々な背景の方が仕事をしていらっしゃって、異文化理解は何も国籍だけではない、ということなのかと思います。」

Q.外国人と関わる事業において大切にしたいポイントは?

峰子:「やはり、自分が当たり前だと思っていることが本当に当たり前なのか疑問を持つ、自分で問いかけをできる思考回路がポイントかなと思います。異文化で暮らして、自分が社会の中でマイノリティであるという経験をされた方は随分違うと思うのですが、今まで外国の文化に触れたことがない場合は、全くそういう発想がない、という方が割と多いのではないでしょうか。

そうした方には言語化してあげたり、模擬体験のようなことをしていただくと良いと思います。例えば、試しにモンゴルの方に通訳なしで指示をしていただいたことがあったのですが、もちろんチンプンカンプンですよね。ジェスチャーで何となくは想像できても、不安な気持ちになる、外国人材はいつもこのような状況で仕事をしているのだと実感していただく場を提供することで、理解が進むのではないでしょうか。」

Q.今後、日本語教育を含め外国人向けサービス事業の需要はどうなるとお考えですか?

峰子:「理想としては、日本社会が違うものを面白がるというか、好奇心を持ってみるという発想が当たり前の世界になれば良いなと思います。どうしても日本人のDNAとして、島国というロケーションもあって違うものに対しては防衛本能が働くんだと思うんですけれども、守りに入るから怖さを感じるのであって、それを払拭するというか、変化できれば随分と変わるんじゃないのかなと。40年50年とかかるのかもしれませんが、そちらの方向へ進むように、大河の一滴として実現のお役に立てたら良いなと思います。

また、30年以上日本語教育に携わってきた中で、時代によって日本語教育のニーズが変遷してきていると感じています。私が関わりはじめた1980年代後半あたりの日本はイケイケドンドンで、やはり日本に憧れて来日される方が多かったのに対し、今では定住外国人の数が増えているんですね。明らかにターゲットとなる日本語のフォーカスポイントが変わってきていて、”生活者としての外国人のために必要な日本語”の教育がメインストリームになりつつあります。

そうすると、当然日本語教師も変わっていく必要がある訳で、日本語を教えるという役割だけではなくなってくるのではないでしょうか。次のステップとして、外国人と日本人がお互いに歩み寄るために、それを繋ぐ役割として活躍できるのではないかなと思っています。」

Q.今後の御社の事業展開とめざすビジョンについて、教えてください

俊慈:「私自身が留学を経験していて、他国で勉強する機会があったのですが、やはりその時は凄くカルチャーショックを受けた訳です。自分が異質なものとして、異物として社会に入って適応しなければならないという状況では、先程からお話しているのとは逆に自分がその社会から抵抗を受けることになります。留学先では日本人にとって当たり前のことがそうではありませんし、ここは日本じゃないから通用しないんだということを強く感じることがありましたが、やはり日本に来て働いている方にもそういう感覚があると思います。

日本文化を学ぼうという姿勢の外国人でも、全てを学んでから来ている訳ではありませんから、受け入れる側も分かり合おうとする姿勢を示してあげたいです。この経験を事業として活かし、日本で働く外国人を拒絶するのではなく、受け入れられるような社会を作っていきたいですね。

日本は若者の人口が減っていますし、特に私は大学で教えていますから、それを肌身で感じているところです。そうすると、社会として外国人を受け入れていくということがどうしても必要になると思いますので、少しでも我々の事業が環境づくりの役に立てば良いなと考えています。初めて外国人と関わる場合に、どういう意識であれば対話や交流が進むのか、ということをお伝えできると良いですね。

今後は、冒頭でも少し触れた、外国人を雇う企業のトータルサポートという3本目の柱を太くしていきたいと考えておりますが、幅広くカバーするためには我々だけですと力不足な部分がありますので、川添さんを含めた色々な方のお力をお借りして、チームとしてやっていけたら良いなと思っています。」

プロフィール

蔭山俊慈(かげやま しゅんじ)プロフィール
「外国人材即戦力化」コンサルタント ☓ 「日本語教師」の道を照らすマスターコーチ
株)J-connect代表取締役 
関西外国語大学外国語学部 教授
大阪茨木市出身、京都府在住。日本IBMのシステムズエンジニアとして8年勤務後、早期退職をし、渡米して日本語教育を専攻。修士号を取得後、アトランタの私立大学で2年間インストラクターとして勤務。その後、帰国し夏期講習の日本語講師として指導し、そこを足がかりに現職の関西外国語大学での職を得る。これまで延べ2,500人の留学生に日本語を教え、プロジェクトベースラーニングや、反転授業のスタイルを採用するなど新しい教育手法を取り入れることで、常に80%以上の高評価を得ている。

蔭山峰子(かげやま みねこ)プロフィール
株)J-connect取締役 エキスパート外国人材プロデューサー 
大阪生まれの大阪育ち。京都府在住。スポーツをこよなく愛する関西人。言語教育の修士号を取得後、国際交流基金派遣により米国で日本語教師として活動。 帰国後、Panasonic外国人社員、大学留学生向けなど様々なニーズの日本語指導に携わる。通算30年以上のキャリアで140か国以上の学習者に指導、これまでJLPTN1合格者は100名以上。