日本から世界へ―公認会計士が拓くタイ・ベトナムの会計ビジネス:株式会社シンシア会計コンサルティングジャパン 熊谷恵佑氏

日本から世界へ―公認会計士が拓くタイ・ベトナムの会計ビジネス:株式会社シンシア会計コンサルティングジャパン 熊谷恵佑氏

会社名:

株式会社シンシア会計コンサルティングジャパン

代表者:

熊谷恵佑

取扱業務 会計税務業務 /法務関連業務

Q.現在の事業を教えてください

「会計コンサルティング事業を行っております。タイとベトナムに拠点を構えていることから外国人スタッフと接する機会が多く、日本拠点でも国内企業の海外進出支援や、海外から日本へ進出するお客様へのサポートを行っていますので、事業全般として外国人と関わるケースが多いですね。海外から日本へ進出される企業に対しては、主に会計や会社設立のサポートを行っておりますが、今後はコンサルティングもやっていきたいと考えています。

拠点はタイとベトナムですが、基本的には国が変わることで税制が大きく異なるということはありませんので、海外取引をされたいというお客様に対しては、どんな国でも対応可能です。ただし、拠点を置いていない国ではやれることが限られるということがありますから、ある程度範囲を絞ってやっていくような方針を取っています。

海外の拠点は現地の会計士と共同経営のような形で運営しておりまして、ローカルの会計事務所と同じ機能を有しているので、記帳代行や税務申告、登記、株主総会の設営など、会社を経営するにあたって必要なサポートはほぼ全てカバーできる体制が整っています。日本の会社さんがタイやベトナムへ進出される際にも、ワンストップ対応が可能です。

海外へ進出する企業の業種は本当に様々ですが、個人よりもある程度大きな会社さんのサポートをお引き受けしていますね。もちろん個人で使っていただけるサービスもあるのですが、金額面からマッチしないケースが多く、会計を重要される会社さんからのご依頼が多いです。

例えば日本に本社があって海外に子会社がある企業にとって、やはり子会社の業績は非常に重要なものなんですね。連結する会社はもちろん、連結しない会社であってもそれは同じで、本社でしっかりと業績を確認して意思決定を行うのは重要なプロセスですから、海外の子会社と繋ぐ役割を果たす日本の公認会計士が必要になるケースが多いんです。

一方で個人となると、そうした視点での会計の重要性は少し落ちるでしょうから、ローカルの事務所を使ったほうが良いのかなと思います。ただ、もちろんその場合は現地の言葉や英語でのやり取りが必要になりますから、別の意味で大変です。そこはメリット・デメリットを考えて取捨選択していただくことになりますね。」

Q.なぜ、現在の事業を始めようと思ったのですか?

「公認会計士の資格が世界で使えるということは、資格を取得する前から本で読んで理解していましたので、いつかは会計で仕事をして世界を広げたい、器を広げたいという純粋な好奇心がありました。

また、今はそうでもないのですが、日本という国に対して文化的に馴染めない自分がいたので、日本からでたい、海外の視点を自分の中に取り入れたら、どんな風に日本を客観視できるんだろうとも思っていました。これも器を広げたいという話だと思いますが、海外を経験して成長したいという思いがありましたね。

最初はカンボジアで会計の仕事をしたのですが、日本とは全く違う世界で全てが新鮮でした。日本では束縛を感じていたのですが、解き放たれて本当に自分らしく在れたんですね。その瞬間は本当に驚きでしたし、自分がこんなに物事をガンガン進めていくタイプなんだということを新しく発見できました。以前からそういう傾向があったとは思うのですが、日本にいる時はそこまでじゃなかったので、リスクを恐れずにガンガン進んでいくのが1番自分らしくて幸せだなと感じましたね。

色々な国から来た色々な人々と接して、当時はそれほど上手くなかった英語を使って会話をすることに、感情的な楽しみと喜びを感じていましたし、世界が広がったことで日々勉強させていただいているという気持ちで生活できましたので、カンボジア時代はとても充実していました。

日本では組織を重んじるというか、個を消さないと立ち回りが難しいので、我が強い人はあまり良い印象を持たれませんよね。もちろん、タイやベトナム、カンボジアが強い人で溢れている訳ではありませんが、もっと自然体で人生の喜びを持って生きている、あまり周囲の意見に囚われていない雰囲気を感じ取ったので、私も同じように振る舞ってみたところ、水が合ったという感じでしょうか。

こうした自分自身の新しい発見に喜びを感じたので、カンボジアでの仕事を一通り覚えた後も日本に帰りたくないという思いから、東南アジアで1番日系企業の多いタイへ移住するしかないと考えました。もし本気で仕事をするんだったら、やはりもう少し市場を広げたほうが良いかなということもありましたので、帰国ではなく移住を決断したという感じです。

Q.現在の事業を通して感じていることは?

「私は海外展開をして凄く良かったと思っています。なぜなら、コロナ前後で日本の経済的な地位はかなり低下したと感じているからです。特にベトナムやフィリピン、カンボジアなどの東南アジア諸国は急激に伸びていますので、その勢いには負けてしまっていますよね。至る所で”日本は大丈夫なのか”という声が挙がっていますが本当にそうで、私は東南アジアを知っているからこそ危機感を感じています。

個の力が弱いというのは今の時代に馴染んでいないというか、それによって日本の国力が弱くなり、日本人が不幸になっているように私は感じているんですね。こうした問題意識を非常に強く持っているからこそやり甲斐もありますし、やはり日本人はこうあるべきだという持論もあって、今の日本人を救いたいという気持ちが凄く強いです。私が昔から喜びを感じることができなかった日本の社会で、本来の日本人の姿を取り戻して日本人が幸せになって欲しいと心から思っています。

日本経済に関する本は、大体失われた30年を論じるものが多いですし、その論調には凄く納得していて、私自身がそれに苦しんで来た人間として実感もしています。ただ、調和を重んじる文化は長所でもあるんですよね。ですから別にどちらが良いという話ではなくて、バランスの問題だと考えています。行き過ぎて雁字搦めになって個が弱くなり、経済も落ち込んでみんながネガティブになっているように見えるので、もっと伸び伸びして欲しい。

若者が社会の中で”こうじゃなきゃいけない”と締め付けられる組織ではなく、自分らしさを大事にして、個性を活かして本当に自分ができることで最大限貢献できる喜びを味わうことで、自由に伸び伸びと生きることができるんじゃないかなと。私にそういう視点を与えてくれたのは海外での経験が大きいですし、今は本当に何でも楽しいんです、日本にいても海外にいても楽しい。」

Q.海外進出支援事業で成功するためのポイントは?

「私の場合はやってみて無謀だったことに気づいたのですが(笑)、結局は上手く流れているのでなんとかなるもんだ、という感じですね。私がこのチャンスを逃したら多分一生タイで事業を立ち上げることはないと思ったように、関係性というか、どういう生き方がしたいのかが大事ではないでしょうか。

やはり私は日本だけではなく、海外としっかり深く交わって豊かな人生を過ごしたいというビジョンがありましたので、それをやるためにはせっかくタイにいるのにチャンスを逃しちゃいけないと思った、その情熱は凄く大事で、やって良かったなと思っています。無謀だと分かっていたらやらなかったかもしれませんが(笑)、やらなかったら後悔していたでしょうから、ある意味で知らなくて良かったんです。

どういう人生を思い描いているのか、その通りに情熱を持って生きていた方が上手くいくんじゃないでしょうか。結果的に私は幸せな人生を歩めていると思っています。リスクを恐れずに、やって見るのが良いんでしょうね。海外進出と言えば製造業、しかも上場企業をイメージされる方が多いと思いますが、小規模のサービス業でもビジネスチャンスはありますし、思いがあれば絶対に方法は見つかると思うんです。特に東南アジアはまだまだ人口が増加していますので、ノウハウを知っている現地のメンバーを探すという意味ではメリットもあるでしょう。個性が爆発している世界で楽しいですよ。」

Q.事業を行う中、苦労した点は?

「海外での仕事は2015年の勤務時代のカンボジアを皮切りに今9年目くらいになりますが、本当に楽しいことばかりで、極端に辛い経験はありません。敢えて言えば最初にいきなり外国、タイで起業したことは結果オーライになったものの、非常に難関ではありましたね。会計士という分野で、日本人の個人が最初に海外で起業というのは恐らく誰もやらないと思いますし、実際にあまり見たことがありません。日本に本社があって海外に拠点を持っているのは基本的に規模が大きな会社ですから、大企業を相手に起業したての個人が仕事を取るのは非常に難しい訳です。

それでも、私は仲の良いタイ人の知り合いができて、現地で生活をして一緒に仕事をする中でしか築けない信頼関係を作れたので、このタイミングを逃したら起業できないなと、他の人とジョイントされてしまうかもしれないと考えて思い切ってやりました。実際のところ難しくはありましたが徐々にクライアントは増えてはいってますので絶対に克服不可という問題ではありませんでした。少数のお客さんを一所懸命サポートすることから始めましたね。

また、コロナ禍になり、結局、日本へ帰らざるを得なくなり、タイだけでは回らないので日本に税理士事務所を立ち上げて両輪で回すような形に落ち着きまして、タイの拠点に関してはそれほど焦らず徐々にお客さんを増やしていくという戦略で全く問題はなかったという結論です。

その後、ベトナムでもベトナム勤務時代に知り合った会計士に誘われて起業することになりました。いきなり3カ国でやることになりましたが、縁というのはその時に決めてしまわないと消えてしまうものだと思いますし、日系企業はタイよりベトナム進出の方が関心が厚いと感じておりましたので、思い切って決断しました。

日本の仕事も忙しいのであまりリソースが割けず理想通りという訳ではないのですが、タイもベトナムもお客さんが増えていますから、しっかりとアプローチして信頼を蓄えていくことで確実に関係性はできていくんだなと思っています。これは恐らく日本での事業基盤があるからで、一個人が海外事業単体という条件では厳しかったでしょうね。

外国人と一緒に働く上での苦労は、やはり言語ですね。最初に一緒にやろうとしたパートナーとは、今でも関係性はあるのですがやはり考え方が違いますし、英語のコミュニケーションでは私がどんな思いでビジネスをやっているのかを全て伝えられないので、なんとなく距離が離れていってしまいました。1回離れてしまうと、ビジネスを再び戻すのが大変なんですよ。日本だったら他のパートナーを探せるかもしれませんが、海外ではそこまで信頼できる知り合いを作ることが難しいので、これはリスクかもしれませんね。ローカルパートナーとの関係が悪化して関係が断たれればもうビジネスは終わりという感じもありますね。

私の場合はそうした事態になっても諦めずにガンガン色々な人にアプローチして、特にタイでは、いきなりローカルのタイ人会計士の事務所に連絡をして、全く関係性がないところから運良く今のメンバーと一から関係構築でき、ビジネスを継続できたという経験もできました。彼らの人間性が素晴らしかったので、上手くいっていない時期もありましたがついてきてくれて、奇跡だなと思っています。本当に恵まれているなと。

コミュニケーションで気をつけていることは、国に関係なく何か問題があったらしっかりと向き合うことですね。問題があって当たり前で、ちょっとしたズレは絶対に生じるので、ごまかさずしっかりと向き合って相手の利益も考えて、そこで自分の思いとマッチする形でどう協働できるのか、ということではないでしょうか。従業員に関しても同じで、命令して従わせるということでは絶対に上手くいかないと思っています。」

Q.今後の御社の事業展開について、教えてください

「関心の高まりから、海外進出支援の業務が増えていくと予想しております。現地での営業代行や輸出支援をしっかりサポートする必要がありますが、私自身がタイやベトナムへ行く訳にはいきませんので、今は現地で対応できる人材を探したりと仕組み作りをしている状況です。

また、NPO関連の支援もしたいと考えています。日本だけではなく、社会問題を扱う海外のNPOを支援することで、これまでに触れたことのない部分をサポートしたいですね。私の中で、資本主義の枠組みだけでやるというビジョンには違和感があり、そこから少し外れて動くことが非常に大事なんじゃないかと考えています。

商売として考えれば儲かる仕事ではありませんので大変ですが、資本主義の中で虐げられてしまった人々や、あまり上手くいかなくなった人がいますから、そうした人々への人としての愛情や貢献したいという思いが人間として大事な要素だと思っております。それを発揮できる志あるNPOをサポートしたいですね。」

熊谷恵佑 プロフィール

公認会計士・税理士 熊谷恵佑 
宮城県仙台市出身、東北大学経済学部卒業
 
日本で、大企業への会計監査業務、中小企業への税務業務、一般事業会社での経理業務を経験後、東南アジア(タイ・ベトナム・カンボジア)で日系企業への国際会計税務・進出支援業務に従事。

2019年夏に独立し、日本(東京)、タイ(バンコク)、ベトナム(ホーチミン)に事務所を構えて、会計税務支援、経営サポート事業を展開。上場企業社外役員、経理顧問等を兼務。